梅雨が明けきらないうちから、祇園祭の町内のものは、お祭りの準備で忙しくなってきますが、7月1日から、色々な行事が始まります。おたべ新町店のある、南観音山鉾町でも、7月1日に吉符入神事が行われます。各町内によって行事が違いますが、どの町内も、17日の巡行を迎えるにあたっての大切な儀式や行事を終えて、はじめてハレの日が迎えられるのです。

堅苦しい儀式の一方で、12日から鉾や山が建ちだすと、山鉾町は急に賑わってきます。祇園囃子の音と共に、粽や、お守り札やろうそくを売るときの子供たちのわらべ歌は、お祭りを一層楽しくしてくれているようです。おたべちゃんも浴衣をきて、南観音山でわらべ歌(1)を歌ってろうそくを売っていました。みんなに「可愛いね」と声をかけられ、ご機嫌だったのを思い出します。
南観音山では、宵山の賑わいが静まりかける最後に、「あばれ観音」という行事があります。南観音山のご本尊の楊流観音さまを神輿にのせて、町内を3回まわって山鉾にのせます。わが家ではこの行事を見たいお客さまが、年々増えてきました。祇園祭りは鱧祭りと言われています。鱧は梅雨の雨をのんで美味くなるといわれ、祇園祭りの頃が一番脂がのり始めます。今年もやっぱり旬の鱧料理でもてなしたいと思っています。

京都には「よそいき」と「つねなり」と言う言葉があります。前者はハレ、後者はケ(2)、けじめが大事だと知らず知らずに身についているのが、京都人かもしれません。我が家では、ハレの日のよそいきの鱧料理は、いつも鱧料理では有名な、堺萬さんにお願いしています。鱧料理の基本と言われるのは、「鱧おとし」と、葛にまぶし、椀に浮かんだ「葛たたき」、焼き鱧か、鱧寿司だと堺萬のご主人が教えてくれました。

また、ハレの日の鱧料理にいつも私の夏野菜のお惣菜をつけてお出ししています。これがいつもとても喜ばれるのです。京野菜というブランド名がつく高い野菜の出回っている現代は、手づくりのお母さんの味が、ハレの日のご馳走かもしれませんね!
旧い京都の商家では、祇園祭に限らず、氏神さんのお祭りには、お赤飯(おこわ)と鯖すしを、お得意さまや、親戚に配る習慣がありました。わが家では、毎年、16日にお世話になった人や、親戚にお赤飯といづうの鯖寿司を配っています。鯖寿司もハレの日のご馳走の一つだと思います。

(1)<ろうそく売りの童歌>
やくよけのおまもりは、これよりでます。ごしんじんのおんかたさまは、うけておかえりなさいましょう。ろうそくいっぽん けんじられましょう。ろうそくいっぽんどうですか?

(2)<ハレとケ>
ハレ(晴れ)は儀礼や祭などの「非日常」、ケ(褻)はふだんの生活である「日常」を表しています。ハレの日は、服装が違い( 晴れ着)、食べ物も違ってきます。(民俗用語)

<千重子おかあさんの夏野菜のお惣菜レシピ>


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