木々の緑が日増しに濃くなってきました。この頃の野菜は、どれも柔らかくて美味しく感じます。玉ねぎや、じゃがいも、キャベツ等、普段いつもある野菜ですが、新物はやっぱり柔らかく、甘味がありますね!
北海道の友人から、新じゃがを送って頂きました。早速、肉じゃがを作ってみようと思いました。我が家は、いつも三嶋亭(※1)のこま切れで肉じゃがを作ります。その日は寺町三条の本店まで足をのばして、こま切れを買いに行きました。
京都にある三嶋亭は、創業百二十年になるそうで、この本店は明治の頃を思わせる町屋風の趣のある建物です。店頭には、美味しそうなロースやヘレ等が並べられていますが、お座敷ではすき焼きも食べられます。
秋の味覚、松茸の旬の頃だったと思います。すき焼きが大好きな、おたべちゃんのおじいちゃんが、「いっぺん家族揃って、三嶋亭のすき焼きを食べに行きたいなー」とぽつりと言われました。その日はみんな揃っていたので、早速行く事に決まりました。ところが、三嶋亭では、松茸はつけられないと言われました。持ち込みならいいと言うことで、本店のすぐ近くの松茸の専門店「とり市」(※2)さんで松茸を買って行きました。下足番のおられる玄関を入り、昔の遊郭のような階段を上がり、奥まった、こじんまりした部屋に案内されました。赤い塗りのテーブルの中央には、三嶋亭特製の八角の鉄の鍋がおかれていました。やがて仲居さんが、すき焼きの材料を運んでこられ、この鍋に手際よく油をひいてから、まずは、少し甘すぎるかなと思う程の砂糖と、特製割り下でお肉を焼いてくれました。それはそれはとろけるようなおいしさでした。次に野菜など入れて水分が少しでたところで、今度はお肉と松茸を炊いてくれました。二回目のお肉は、濃厚な一回めの味とは違い、松茸の香りがしみ込んだ、品のある味でした。おたべちゃんのおじいちゃんは、孫達と、大好きなすき焼きが食べられて、大満足のようでした。おじいちゃんの一言で、一度は食べたいと思っていた「三嶋亭」のすき焼きと、京都の地の物を扱う「とり市」さんの松茸も賞味する事が出来ました。
|
|
三嶋亭
|
「肉じゃが」といえば「おふくろの味」の定番のようですが、おばんざいと言われる家庭のおかあさんの味は、誰もが求める味、ホッとした思いを抱かせる味ではないでしょうか!
三嶋亭のこま切れの肉で作っている我が家の「肉じゃが」をいつか、おたべちゃんの子供が、「ばーばーの味」として喜んで食べてくれるかなーと、ふと夢を描いてしまいました。
|
「三嶋亭」(※1)
創業明治六年(1873年)。京都市内、寺町通三条角に本店を構える。
精肉販売もされる他、すき焼き、オイル焼きなど様々なかたちで牛肉の美味しさを存分に楽しめる料理店です。
「とり市老舗」(※2)
四季にあわせて旬な食材を扱う京野菜専門店。京漬物の老舗としても有名です。
|