2月は「いなり寿司と畑菜の辛し和え」→
京都のお正月は、元旦の朝に、白味噌雑煮でお祝いします。お雑煮とは、お餅や、野菜、肉などを汁に入れて炊くのですが、関西地区を除いて、全国的にすまし汁が多いようです。なぜ京都は白味噌なのか、考えもしませんでしたが、これは平安時代の公家文化の名残だそうです。昔、甘いものが大変重宝され、上層階級の人たちは、この白味噌の甘さを好みました。そういえば、京都には味噌あんを使ったお菓子が沢山あります。初釜にかかせない花びら餅(宮中の包み雑煮から転じたもの)も味噌あんが中に入っています。
昔から大晦日の夜に、祇園さんのおけら火(おけらという薬草の根を粉にしたものを火にもやしたもの)を吉兆縄にうつし、消えないようにまわしながら持ちかえります。そして、無病息災を願いながら、この火を火種としてお雑煮を炊く風習があります。こうして炊いた白味噌雑煮のなかに、男の子には、人の頭(かしら)になるように大きい頭芋を入れます。子孫が繁栄するようにと、小芋も入れます。他に、京人参と祝大根は輪切りにし、お餅は丸餅と、角のないものを頂いて、この一年、何事も丸う治めて暮らせるようにと、色々の願いが込められているのです。我が家では、おけら火まではもらいに行きませんが、おたべちゃんやお兄ちゃんらも皆揃って、元旦の朝は、白味噌雑煮で毎年お祝いをしています。

幼少の頃も、いつも元旦には家族揃ってお祝いをしていました。暮れに用意された、おせち料理と、それぞれの名前が書いた箸紙が並べられます。最後に母が、熱い白味噌雑煮をお椀にいれてさあー頂く時に、父の元旦の訓示が始まるのでした。「さあ、今年も姉妹なかようして、何事もないように・・・・・」から始まりました。私は、上の空で聞きながら、お雑煮が冷めないうちに、はよ食べたいといつも思っていました。
おたべちゃんのおじいちゃんから、毎年、元旦に何か言われるか心配でしたが、いつも「おめでとうさんどす。お祝いやす」の一言で熱い白味噌雑煮が頂けました。
ある年の事でした。
「千重子さん、今年の白味噌のお雑煮、ほんまにおいしおすなあ!」と義父に言われた事がありました。それは「山利さん」の白味噌を使うようになった年でした。山利さんはもともと辻留さんの(茶懐石料理)専門の味噌を作っていたのを、料理屋さんの評判がいいので、今では味噌専門店としてやっておられます。今年も家族揃って、熱い白味噌雑煮でお祝いしょうと思っています。
参考文献:大村しげの京のおばんざい 
←12月は「赤い京人参の入ったかやくご飯」