おたべちゃんのお母さんの年中行事も、最後の月になりました。三月と言えば桃の節供。雛祭りは、何か春めいてきていいものですね!
でも何故か、3月、奈良東大寺二月堂のお水取りの時期は、いつも寒くなります。おたべちゃんのおばあちゃんが、「やっぱりお水取りが終わらんと、あったこならへんな」とよく言っていました。  


おたべの工場が若狭に出来た時、毎年3月2日に、若狭の神宮寺で「お水送り」という行事がある事を、始めて知りました。本堂の横にある若狭井戸から汲んだ水を、鵜ノ瀬の河原から遠敷川に流します。その水が何故か奈良まで行き、お水取りの水になるそうです。本堂の前に焚かれた大護摩から、それぞれが松明に火をうつします。そして、2キロ離れた鵜ノ瀬の河原まで、この松明の行列が続くのです。この古式豊かな祭典は、古都小浜と奈良が歴史的にも結ばれていると感じさせるものでした。
 

京都と若狭の関係も、歴史的にとても古くから続いているように思います。鯖街道に伺えるように、海のない京都にとって、若狭の海の幸は本当に有難いものでした。
「若狭の小浜でとれたぐじを浜塩にして塩鯖と同じく鯖街道を京都までつく頃には、程よく塩がまわり、身がしまったものになります。そしてその若狭ぐじの細作りは、茶懐石の向付けとしてとても重宝されていたのは、この小浜から京へのルートのお蔭です。」と、辻留の辻嘉一さんが言っておられました。


ただ大事なことは、若狭ぐじの細作りを頂く時は、必ず植物性の酸味を4、薄口醤油4、出し汁2のかげん酢(※1)で賞味することです。醤油だとぐじの塩味の旨みを消してしまうそうです。またぐじの頭はお客さまには出せないけれど、これほど美味しいものはないとも言っておられました。そう言えば私も子供の頃、よく、ぐじの頭を食べました。こんがり焼いたぐじにとろろ昆布をのせ、暑いお湯か、昆布だしをそそいで頂くのです。すると子供でも上手に身が取れ、美味しかったことをよく憶えています。

お雛様のお料理に添える「若狭の笹かれ」は本当に上品な味の干物だと思います。そして、春や秋祭りには、「鯖ずし」はなくてはならない、ハレの日のご馳走です。  若狭におたべの工場を建てたのは、銘水百選の若狭の瓜割りの水があったからと、おたべちゃんのお父さんが言っていました。今年はおたべちゃんと「若狭のお水送り」に行こうと思っています。行事が夜遅くに終わるので、若狭工場で泊まる予定です。でも若狭ぐじは、程よく塩まわりがよくなる京都で頂くほうが、何か美味しいような気がしました。



<千重子おかあさんのぐじレシピ>


酒蒸し 焼き物

【お酢のコト】
最近、酢が体にいいと言われていますが、素材によって酢と合わせる調味料が違ってきます。
二杯酢:基本は、酢と醤油が同量です。それに頂く素材によって、わさびや、生姜、からし等を合わせます。
三杯酢:酢、醤油と酒の場合と、酢、醤油、出し汁の場合がありますが、すこし甘味がほしい時は、私はみりんや、少し砂糖を入れたりします。
かげん酢(※1):出し汁の三杯酢に柑橘類の絞り汁をいれます。混布ジメの魚にはかかせないものです。
すし飯用の合わせ酢は、酢、砂糖、塩を合わせます。
このほか、中華風の胡麻酢、イタリアのバルサミコ、今はやりの黒酢、りんご酢などがあります。


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