夏 京都のおばんざいの中で、であいもん(出合い物)と言われるものがいくつかあります。
たとえば、身欠きニシンとナス、イカと小芋、棒ダラと海老芋、筍とワカメ、生ぶしと焼き豆腐、お揚げさんと水菜等です。どれも本当になくてはならない相手だと思います。中でも身欠きニシンとナスは、夏のおばんざいとして子供のころから、本当によく頂きました。あの丸い京の加茂茄子は、京野菜として有名になりましたが、やっぱり煮物には山科ナスがとろっと煮けておいしく、ニシンとの炊き合わには、山科茄子は欠かせません。
ところが最近は、地のナス(京都産)と表示されているものは、純粋の山科茄子ではないそうです。本当の山科茄子は、昭和初期まで京茄子の主流を占めていました。皮が薄く、肉質が軟らかく、種がすくなく、煮物はもちろんの事、焼きなすや、どぼ漬け(ぬか漬け)に最適でした。ただ、収穫すると濃い紫色が変色したり、傷いたりと、大変品質管理が難しく、現代の流通には不向きとなり、品種改良されてきました。山科の農家で作られているナスも、今やほとんど品種改良されたものだそうです。
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秋茄子とニシンの煮いたん |
今月はおたべちゃんのお誕生月なので大好きなおなすを煮いてみました。秋茄子は嫁に食わすなとよく言われますが、9月頃のおなすは本当に美味しいですね。山科の農家の渡辺くんが届けてくれた千両茄子はニシンの味がしみこんで、本当に美味しく煮けました。であいもんの味は、両方の味を引きたてるなんともいえない味のハーモニーです。この味を、子供の頃より憶えていたから、今日は特においしく煮けたように思います。そして祇園のおばあちゃんのおなすの煮いたんの味も未だに忘れられません。おたべを売り出して間もない頃、よく手伝いに来てくれました。その頃は、お店の人や家族含めて昼食の用意は十人程になります。おばあちゃんは、「千重子さん、何かお手伝いしましょか!」と言って腰の曲がった小さな体で、いつもお鍋いっぱいに、ニシンとおなすを煮いてくれました。ニシンは丁寧にゆっくり湯がいて、その湯がき汁を少し残して煮くおばあちゃんの煮き方で、今も煮いています。
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京のおばんざいの【であいもん】の妙味を、次の世代に伝えていきたいと改めて思いました。
※参考文献「四季の京野菜とおばんざい」(NHK出版)
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